長駄文館・・・これ、映画裏鑑賞為り。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　これ、映画裏鑑賞為り。（4/25/23）
　殊の外、昨夜は寒かった。これは行かんと思って、久し振りに湯たんぽ２個を入れての足伸ばしで、おお、暖かいの布団入りで在った。前日観る事が出来なかった『網走番外地』を観ながらの就寝で在った。

　高校時代に観た映画で在るから、出演者の皆さんはみな若い。封切り時の映画観と違って、古希坂住人の観方では大いに違って来る物で在る。映画のストーリー、配役の映画その物よりも、激寒の雪の原野で手錠に繋がれた脱獄劇を演じて居る俳優、監督、スタッフ達の撮影の合間、合間で交わされる『仕事仲間の生の声』が聞こえて来る感じで、それを想像して観て居た方が、何倍も面白いので在る。

★「カット、カット、この状況は顔で演技じゃ無い。体で演技してよ。此処はカメラを退いての、殺意が爆発するシーンだよ。もっと荒々しく、体技と白い息技のギリギリの迫力が欲しいんだよ。解るね。呼吸を合わせて、頼むよ！！」

★「おいおい、またＮＧかい。冗談じゃ無ぇぞや。このしゃら寒い中を、体技と白い息のギリギリ迫力だと。監督の野郎、人の体を何と思ってるんだ。虐待じぁ無ぇか。」
★「そうだよ。入社は俺と同期の癖し遣がってからに、撮影終わったら、首根っこ押えて、二人で雪埋めして遣らっか。監督の特権振り回し遣がってからに。少しぁ、演じる俳優の俺達に敬意を払い遣がれ。」
★「まぁまぁ、○○さん、抑えて抑えて。いざと為ったら、国連のさ、国際人権委員会に訴え遣る手も在るからさ。」

★「ったく、動いてるスターさん達は好いけどもさ。俺達動きの無い掛かりは、安いお手当で、八つ当たりされて、堪ったもんじゃ無いよ。手前ら破格のギャラ貰ってんだろう。一発で決めれや。長靴に唐辛子入れてても、指先は凍傷に為っちまわな。嗚呼、下積みは遣り切れんわな。」

★「カットカット、こらぁ、照明フラフラ動くな。白黒映画だ。好い写真が撮れんぞ。みんな寒いんだ。我慢して、好い映画を撮るんだ。気合いだ、気合いだ。未だ４シーン残ってるんだ。終わらせて旅館で風呂して飯、酒が飲みたかったら、頑張るんじゃい。さぁ、気合いを入れて行こう。映画は金の生る木じゃい。はい、スタート！！」

★「偉そうに、気合いじゃ無くて、俺ぁ、あんた『嫌い』だよ。嗚呼、陽が暮れて来た。雪の原野は、しばれるなぁ。熱い風呂に味噌汁、酒は何時に為るんじゃろうね。人殺し～。」

　　　　　　主演・高倉健　共演・南原宏治・丹波哲郎・嵐勘寿郎。安部徹・田中邦衛他。

　人間、とおが立って来ると、聞こえて来ない『現場の生声』が聞こえて来る物で、あの時、皆若かったの人生の振り返りが、映像の中に見えて来る物なので在る。これを称して、『下衆の映画裏鑑賞』と云うので在る。

　尤もこんな他愛の無い裏鑑賞が出来るまでには、其れなりの人生の実体験と歳の年輪を刻んで来ないと出て来ない次第では在るが、根が優等生、才媛の性質では叶わない『裏鑑賞術の才能』と云う物で在ろうか。人間、他所行きの顔、物云いをして居ては、面白くは無いのが娑婆付き合いと云う物で在る。人間、一皮剥いて素顔に為れば裏話に内実にそうは、相違は無かろうに。イヒヒ。

　食後は熱めの朝風呂として、朝のご挨拶に庭降りをして地面接見として来る。昨日の寒さで、成長も足踏みの様子で在る。その分、花々の褪せも留まって居る次第で在る。

　朝の青空は曇り空に後退して、昨日の予報では雨との由で在った。大笊の古沢庵の丸干しも本日で３日目で、好い乾き具合に為って来た。